一見異なって見える科学/サイエンスと美術/アート。しかし、なにか”普遍”に通じるものを追究するという点で両者は等しいのだ。彼らをファンダメンタルズと呼ぼう。
ファンダメンタルズ プログラムは、2023年12月16日から27日まで東京大学駒場博物館(東京都目黒区)にて、24組+4名の科学者とアーティストの交流の過程を展示する「ファンダメンタルズ フェス (2021-2023) 」を開催しました。 会期中、交流会場にて一部出展者は交流の報告を行いました。「ファンダメンタルズ フェス (2021-2023)オンライン一般公開」は、closedで行われたこの報告を、皆さんと共有するものです。
9組+2名の多様な試みとその語りを、ぜひご覧ください。
概要
ファンダメンタルズ フェス (2021-2023)オンライン一般公開
会期:2024年2月1日(木)-29日(木)
料金:無料
会期: 2023年12月16日 (土) -27日 (水)
会場: 東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区駒場3-8-1 )
【メイン会場】東京大学駒場博物館
【交流会場】東京大学駒場小空間 主催 : ファンダメンタルズ プログラム
共催:東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館、科学技術広報研究会 (JACST) 隣接領域と連携した広報業務部会、東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
協力:東京造形大学
協賛:特定非営利活動法人ミラツク
ラインナップ
1.石河睦生 (医用工学) × 一ノ瀬俊明 (都市環境学) × 湊丈俊 (表面界面科学) × 澤崎賢一 (映像、プロジェクトベースド・アート)|2021年度〜
マルチモーダルな共創×研究プロセスの情動
これまでのところ、ほそぼそと交流を続けてきて、それゆえまとまった成果などはまだありませんが、以前のファンダメンタルズの展覧会では、アーティストと研究者の対話の記録として映像作品を紹介しました。新たに立ち上げようとしている研究プロジェクトでは、研究プロセスの研究者の人間性にフォーカスしながら、映像などのマルチモーダルなメディアを生かした対話の試みに向けて、まずは3名の研究者の研究室を映像で記録しました。
2.一ノ瀬俊明 (都市環境学) × 大槻唯我 (写真)|2022年度〜
「風景」と社会課題
1990年に足尾の営林署で治山事業に従事していた一ノ瀬と、2019年より国内の廃鉱に関するリサーチと作品制作を断続的に続けている大槻によるプロジェクトです。今回の展示では、足尾銅山周辺の山地の現状を赤外線と可視映像によってドローンで撮影した作品や、銅山の関連資料、33年前に足尾で撮影された写真などを展示します。
3.一ノ瀬俊明 (都市環境学) × ヒロイクミ (ミクストメディア、インスタレーション)|2023年度〜
風が吹けば桶屋が儲かる
この交流では、アートとサイエンスの観点から、気候変動に関するさまざまな未来シナリオを模索しています。私たちの身の回りにおける事象が複雑に絡み合っていることに興味をもち、環境啓蒙活動・サイエンスフィクションについて対話をしてきました。
4.金孝妍 (絵画、インスタレーション)|2023年度〜
吾輩の視力は0.0001である
生理的、物理的な「見える」ことだけではなく、目の見えない場合の「見える風景」も含めて、「見る」という行為に「見られる」を足してみています。
私達は常に「見られる」環境にあります。それは誰かが見ていることに限定されません。自然を含めて目をもたないもの達の存在に囲まれた環境を一歩踏み入れた先に気を配ってみると気づく世界があります。
5.桑垣樹 (幾何学、代数解析学) × 椛田ちひろ (絵画、インスタレーション)|2023年度〜
絵画の構造を数学の言葉で記述してみる
この交流では、数学者と画家が「絵画を数学の視点・言語でモデル化する」という素朴な試みに挑戦しています。
『何が絵画を絵画たらしめているのか?』という問いに、椛田は画家の言葉(作品)で応えます。桑垣はその言葉を、数学の言葉で語り直します。しかし、そこで語られるものは単純・抽象化された絵画たちであり、椛田に戸惑いをもたらします。
対話を重ね、その戸惑いを昇華し、新しい視野が拓けることを期待しています。
6.冨田秀一郎 (発生生物学) × 木村亜津 (立体、ドローイング、植物)|2021年度〜
いきものって何だ?
生き物をめぐる交流の中で今回は昆虫の糞に注目しました。様々な昆虫の糞をお湯で抽出し糞茶として飲んでみることに。またこの体験を広げるためにお茶会と称してワークショップを行いました。さらに、糞をお湯で抽出した色素を使ってパターンを描きました。嗅いだり味わったり感覚を駆使して虫の生活を探ります。
7.難波亮 (理論的宇宙論) × 森政俊 (写真)|2022年度〜
自然現象の奥に横たわる法則を感じるということ
科学と芸術との間に横たわるものはあるのか、この問いを立てたとき直観的に「詩」という存在が浮かびます。
「詩」の本質は新しい形式を創造し1、形式そのものを目的としながら2、形相的(形式的)想像力と質料的(物質的)想像力を必要とする3、と語られます。
これらの思索を土台とし、科学者が芸術に触れることによって紡ぎ出された言葉を朗読し、芸術家が科学に触れることによって紡ぎ出された描像によってその様を映し出す-その先にあるものが、科学と芸術との曖昧な境界に触れることの始まりではないでしょうか。 (1詩人マラルメ/2言語学者ヤコブソン/3哲学者バシュラール)
8.巴山竜来 (数学、コンピュータグラフィックス) × 山本雄基 (絵画)|2022年度〜
数学と絵画の往還ー3DCGを媒介に
画家である山本と数学者である巴山による共作プロジェクト。3Dコンピュータグラフィックス(CG)の技法を使った幾何学的対象の可視化を通じて、新たな絵画表現の創出を目指しています。
※詳しい作品解説をここで公開しています。
9.山脇竹生 (化粧品原料の開発) × 加藤巧 (絵画技法、テンペラ)|2023年度〜
パール剤-光の表現のものがたり
化粧品や画材に使われ、キラキラとした効果を付与する「パール剤」。私たちはパール剤がかつて真珠の模倣を目指し作られたという点に着目し、パール剤の変遷を調査しています。
魚の鱗、鉱物の雲母といった天然材料から合成品までの歴史をたどる中で、これらの偏光材料を芸術家/科学者の視点で見つめ直しています。現代絵画上での応用を目指し、塗布サンプルを複数作成しました。展示ではここまでの模索プロセスを公開します。
10.山脇竹生 (化粧品原料の開発) × 吉見紫彩 (抽象画)|2023年度〜
アートと化粧の接点をみつけるワークショップの実施報告
資生堂研究所にあるミュージアムにて、美容に興味のある層に対して、アートと化粧の接点を探るワークショップを、アーティストの吉見と研究員の山脇とで企画・実施しました。本展示ではその企画作りの考えや意図といった実施報告を行います。
11.Life is a Poem (アップサイクルアート)|2022年度〜
主観と客観の共存
主観を排し、常に客観的であろうとする科学。世界を見つめる主体に絶対的な客観は可能なのか。
何かを創ろうとするアート。創ろうとする私は存在するのか。私が見ている世界と他者が見ている世界は同じものを見ているのか。
主観と客観の共存について、ファンダメンタルズと行った対話の過程と、対話を通して考えた主観と客観について展示し、その展示を元に会場で来場者とのディスカッションを行い、作品に追記していきます。
関連リンク
ファンダメンタルズ インタビュー 2023
ファンダメンタルズ インタビュー 2022
お問い合わせ
ファンダメンタルズ プログラム 代表 坪井あや
E-mail:contact_at_fundamentalz.jp
*_at_を@に変更してください
アートワーク:mole^3|記録映像:NVS|記録写真:西村伊央|企画・運営:ファンダメンタルズ プログラム(宇都宮真木、坂口愛沙、長谷川麻子、藤原稔久、山口貴子、坪井あや)|