2022年12月24日 (土) から25日 (日) の2日間、東京大学駒場小空間 (東京都渋谷区) において「ファンダメンタルズ フェスmini 2022ーアーティストと科学者 交流の過程の展示」を開催した。以下ではその実施内容、実施目的、実施結果を概観し、まとめる。
目次
1.数字で見る
出展作家/科学者
アーティスト:
安里槙, 飯島暉子, うしお*, 宇都宮真木, 大槻唯我, 北野謙, 黒沼真由美, 澤崎賢一, 前川紘士, 森政俊, 山本雄基*, 吉田ゆう, Saki Furuya*
科学者:
石河睦生(医用工学, 桐蔭横浜大学 医用工学部), 一ノ瀬俊明(都市環境学, 国立環境研究所 主幹研究員), 大黒達也(神経科学/計算論的音楽学, 東京大学 IRCN 特任助教), 寺田健太郎*(宇宙地球化学, 大阪大学 教授), 冨田秀一郎(発生生物学, 農業・食品産業技術総合研究機構 グループ長), 中島啓(幾何学的表現論, カブリ数物連携宇宙研究機構 教授), 難波亮(理論的宇宙論, 理化学研究所 iTHEMS 上級研究員), 巴山竜来*(数学/グラフィックスプログラミング, 専修大学 准教授), 福永真弓(環境社会学, 東京大学 准教授), 湊丈俊(表面界面科学, 分子科学研究所 機器センター), Hannes Raebiger*(物性物理学, 横浜国立大学 大学院工学研究院)
*会場参加なし
実施内容
[口頭発表] 11組の研究者とアーティストのペア/個人による口頭発表(非公開)
[ブース展示] 14組24名の研究者とアーティストによる資料・模型・作品の展示
[一般公開] 限定的な会場一般公開(参加ファンダメンタルズとの交流の機会提供)
[ハンドアウト] ハンドアウトの作成・配布
タイトル :ファンダメンタルズ フェスmini 2022
会 期 :2022年12月24日 (土) - 25日 (日)
一般公開 :両日 15:30-17:30
会 場 :東京大学駒場キャンパス 駒場小空間
料 金 :無料
定 員 : 各日40名
主 催 : ファンダメンタルズ プログラム
共 催 : 科学技術広報研究会 (JACST) 隣接領域と連携した広報業務部会
助 成 : 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
協 賛:特定非営利活動法人ミラツク、カクタス・コミュニケーションズ株式会社
ハンドアウト:
実施目的
ファンダメンタルズ プログラム目的:
最先端科学を中心とした分野の研究者と現代の美術を中心とした作家のことを、共に何か普遍に通ずるものを追うものとして”ファンダメンタルズ”と名付けます。
ファンダメンタルズが交流ができる環境を整備し(1)、目先の意味を超えて何か普遍に通ずるものを追うということ自体に大きな意味があることを広く社会に広報し、合意形成していきます(2)。
この2点により、科学・美術・社会を新たに結びつけ直し、各領域を活性化させること、それが新たな文化を形成することを目指すのがファンダメンタルズ プログラムです。
前回のフェスminiを踏まえて課題:
来場者との期待値設定を揃えるー"展覧会"ではない
交流促進の契機とする(目的1)は継続する
(目的1)と一般と、この生成の場の意義を共有する(目的2)は機会を分ける
前回のフェスminiを踏まえてコンセプト:
一種の展覧会とも捉えられますが、展覧会を目指すものではなく、美術、科学、その融合、そして完成品としての展示物、プロセスを体験できるような資料や模型、さらにそこで対話している人たちなど、美術、科学に関わる複数の範囲における、複数の様相が複数の媒体として集まる"フェス"ー祝祭を試みるものです。
広報の方針*:
幅広く"一般"を対象にするのではなく、ファンダメンタルズを知ってもらいたい人に届ける。
*フェスmini 2021についての広報方針。メタバースについては別途設定する。
実施結果
1. 数字で見る
参加数
展示来場者数:30(アンケート回答数:19)
SNS*
YouTube:678 (+20)
Facebook:154 (+10)
Twitter:161 (+8)
Instagram:128 (+13)
Webページ* 1119 pv
*2023/01/10時点。()内は2022/12/01との比較
2. 来場者アンケート(n=19)
会場を訪れた来場者にアンケート用紙を配布、記入してもらってその場で回収した。回収数は19。
属性
来場者の年齢層としては、幅広い層にアピールしており、20代以下と30代が26%(20代16%、10代以下10%、30代26%)。次いで40代が21%、50代が17%となった。
来場者の主な職業は、会社員が最も多く全体の約3割を占める(33%)。他の職業は自営業17%、その他17%、公務員11%、無職11%にわれた。
来場者の主な関心領域は、科学と美術両方に関心を持つ人が全体の約半数を占め(47%)、次いで美術33%、科学6%、その他3%と、主に美術に関心のある人が多かったことがわかる。
来場者の主な情報入手経路は、知り合いのすすめ(40%)、ファンダメンタルズWeb/SNS/NL(35%)、その他SNS(20%)と、主に口コミとファンダメンタルズ経由できていることがわかる。
満足度
アンケートに回答した来場者のうち、約9割が満足(「とても満足」47%、「満足」42%)、不満の回答はなかった。高い満足度が伺える。
普遍への関心変化
アンケートに回答した来場者のうち、約8割が普遍に通じる何かを追う営みに関心を持った(「とても関心を持った」47%、「関心を持った」32%)と回答している。関心を持てなかったという回答はなかった。高い関心度が伺える。
アート/科学の印象変化
アンケートに回答した来場者のうち、約8割がアート/科学の印象が変わったと回答している(「科学についての印象が変わった」41%、「アートについての印象が変わった」18%、「科学についての印象が変わった」「アートについての印象が変わった」両方を選択18%)。
自由意見
自由意見では、
良い点:
科学やアートをよく知らない人でもわかりやすく、楽しめる内容であった。
多くの出展者と話す機会が得られた。
科学的なテーマをアートを通じて学ぶことができた。
科学とアートが混ざり合うプロセスについてもっと知りたいとの要望があった。
検討事項:
ペアの今後の活動や展示に関する情報が配布されると良いとの意見があった。
作品を見るだけでなく、解説を聞くことも必要だと感じる参加者がいた。
広報効果として、インスタグラムを活用すると良いとの提案があった。
定期的にイベントを開催してほしいとの要望があった。
3. 出展作家・科学者からのフィードバック(n=14)
24名のファンダメンタルズ(出展作家・科学者)のうち、14名から回答があった。
満足度は9割超。不満という回答はなかった。
全体・総合:「満足」77%「やや満足」15%。「普通」8%。
会場・仕立て:「満足」61%「やや満足」31%。「普通」8%。
口頭発表:「満足」38%「やや満足」54%。「普通」8%。
ブースセッション:「満足」46%「やや満足」46%。「普通」8%。
一般公開:「満足」31%「やや満足」54%。「普通」15%。
イベント参加を通じ、パートナーとの交流が促進したかについては100%が評価。
コンセプトの達成については、回答者の3/4が評価(「そう思う」37.5%「ややそう思う」37.5%)。評価しないという回答はなかった。
3-1. 得られたこと
参加者からのフィードバックによれば、プログラムに参加したことで以下のようなことが得られたと述べられている。
研究者同士やアーティスト同士の繋がりが形成され、新たなコラボレーションの可能性が生まれた。
口に出しにくいテーマについて自由に議論し、質問や立ち話ができる貴重な機会が提供された。
口頭発表中にディスカッションが始まる場面が見られ、より活発な意見交換が行われた。
年に一度の対面イベントに参加できることは喜ばしいとされ、交流の促進に効果的であると評価された。
参加者以外の人々とも交流し、フィードバックを得ることができたことが良かったとの声があった。
口頭発表や展示を通じて、交流の現状を把握する良い機会となった。科学者や作家からの質疑は特に意義深く、濃密な議論が行われた。
他のペアの交流状況や進行状況を知ることができ、今後の自身のペアの交流方法に活かせると感じられた。
異なるペアのアプローチや交流方法の多様性が興味深く、互いの相似点や相違点が明らかになった。
問題点や課題が可視化され、改めて考える機会となった。
イベント会場は日常とは異なる異空間であり、立場や世代、性別に関係なく自由に意見交換できる場として好評だった。
2期目の参加者とも新たな交流が生まれ、積極的な交流の経験が得られた。
これらのフィードバックから、プログラム参加者は研究者とアーティストの交流や議論を通じて新たな視点や洞察を得ることができ、異なるバックグラウンドを持つ他の参加者との交流も豊かな経験となったことがわかる。
以下個別にみていく。
3-2. 会場・仕立て
良い点:
雰囲気や舞台設営、照明の配置が素晴らしかった。
会場がアートとサイエンスの交流にふさわしい雰囲気を持っていた。
会場構成やレイアウトが華やかで、演出力を感じた。
参加者同士の距離が近く、共同でイベントを盛り上げる実感が得られた。
問題点:
会場外からイベントが行われていることが分かるような表示があると良いとの意見があった。
会場のコンセプトがアート寄りであり、アートとサイエンスの中立な空間にすることが求められた。
一部のブースが狭く、映像展示の音が聞こえづらかったり、近くの音と干渉していると感じられた。
3-3. 口頭発表
良い点:
参加者同士の直接の交流が素晴らしいと評価されている。
リアルタイムで参加者全員の反応を感じることができる。
多様な視点や意見を得ることができ、有意義な時間になった。
個別のペアの発表が個性的で興味深かった。
問題点:
録画用のマイクはあったが会場用マイクはなかったため、発表者によっては声が聞こえなかった。
発表者全員の話を聞けるようにすると良い
パーク秋の開催時期とフェスminiの開催時期は間を空けた方が良い
チョークトークだが書くのを忘れた
3-4. ブースセッション
良い点:
話し手が制作意図やテーマとのつながりを説明することで、多くの一般参加者が興味を持ち、感動を覚えた。
参加者同士の交流がしやすい空間が作られていた。
ブース担当者は、持ち回りで展示を見ることができ、進行がスムーズだった。
一般参加者に時間制約を気にせず話す機会が提供され、ありがたく感じた。
問題点:
美術館や博物館のような簡単な解説を貼っておいたり、「●時に戻ります」という貼り紙等でメッセージを残せるといい
展示物の配置について、スペース間が狭かった。座れるといい。
スタッフの自由な動きについて、アナウンスがあると参加者にとって分かりやすい。
全てのセッションをフルで対応する必要が生じたため、仕組みの改善が必要。
他のブースをゆっくり回る時間がなかった
3-5. 一般公開
良い点:
予想外に多くの方が来場し、対話ができた。
ちょうど良い入り具合だった。
一般参加者が意識が高く、展示側も勉強になった。
多様な来場者がいたため、企画の位置付けを再確認できた。
一般参加者との交流が展示のコアとして重要であり、自分たちの関係や目的を振り返る機会になった。
交流の方向性に自信がもてた
問題点:
一般の方に展示の目的や趣旨を理解してもらえたか不安
ファンダメンタルズ同士の立ち話と一般参加者とのコミュニケーションのバランスが取りづらかった。
若者をもっと呼びたい
オンライン告知に加えて、アナログ告知やメディアへのアプローチが必要である。
instagramの活用を検討
全体的な来場者数は少ないと感じられた。
アートに興味がある人が多く、科学への関心のあるコミュニティへの周知が必要である。
途中経過の報告会のような展示だと、案内しにくい
3-6. その他
良い点:
フェスminiは、参加者がテーマについてリアルタイムで反応し、示唆を得る絶好の機会となった。
一般参加者は国籍を越えて興味を持ち、さまざまな視点から話し合うことができた。
ファンダメンタルズのプレゼンテーションからさらなる展開が生まれ、ディスカッションが行われるなど、密度の高い時間を過ごすことができた。
ワークショップ形式のイベントは大成功であり、参加者同士の交流が促進された。
場に向けた調整という共通の目的を持って臨め、当日での発表や共同作業によっても、パートナーとの交流が深まった。
問題点:
看板には公開時間を書いておく
メタバースの利用方法には工夫が必要であり、デジタルデータだけでなく社会との関係や共有体験を作るための仕組みが必要。
今年度の参加者にとっては、年内開催は準備期間が短かった。
イベントの広報を早めに行うことや、各イベントの位置づけや年間スケジュールを共有する方法についての改善が提案された。
また、ファンダメンタルズという社会現象をより深く捉えるために、キュレーターの方を招き、お話を聞くなどの提案があった。
4. 実施に至るプロセス
8/29 場所内定
内部案内
10/29 送付:フェスmini意向伺い(11/8締切)
11/8 送付:リマインド フェスmini意向伺い
11/17 送付:パーク+フェスmini説明会の告知
11/25 送付:リマインド パーク
11/26 開催:パーク+フェスmini説明会
11/28 送付:タイムテーブル告知+フェスmini仕様確認とハンドアウト依頼(12/5締切)
12/5 リマインド送付:ハンドアウトアップデートとフェスmini仕様の確認締切
広報
12/1にウェブサイト公開SNSでの告知
12/16パーク記録動画の限定公開(閲覧数:134)
12/20-25 FB広告
次回に向けて考察
よかった点、継続する点
コンセプトは継続
口頭発表と展示両方やる。議論の場としての設定はとてもよく機能していた。
改善点
広報戦略の再検討。
内部の展示プラン締切を早く
参加者への周知を改善:よくわかっていない人がいた
会場音声が聞こえにくい点を改善
ブースセッションのオペレーションを改善
全部聞きたい点を検討
発表は、ファンダメンタルズの交流についてに限定する(個人発表の場合はなぜfzからそれなのかがわかるように)